「ぼちぼち結論」 養老孟司著を読み終えて

2001〜2007年中央公論に連載された「鎌倉傘張り日記」の内容を「まともな人」「こまった人」「ぼちぼち結論」の3冊に纏められたもの。
先生が成り立たない時代:―先生とは「先を取ること」、また「勇将の下に弱卒なし」と評した。今は「先生だからえらい」から業績主義に変化し、ていの良い子守か。

先生はえらい (ちくまプリマー新書)

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幸せと社会システムについて:―幸せとは全く個人的なもんで、他人は本来無関係であり、一般的な幸不幸はない。日本人が幸せそうに見えない理由は、心の余裕がないために幸せに見えない。物質的に豊かでも、実力より地位が高くなると「年中負けてばかりいる横綱の機嫌が悪い」のと同じで、不幸と成る。個人のあり方と社会人としてのあり方、その食い違いが少ない社会ほど良く出来た社会である。日本は良く出来た社会であるが、国際化が進み日本型システムが意識的によく理解されなうちに壊れようとしている。
アメリカと日本:―何事もアメリカ任せでも、先を読み程ほどの大人の付き合いを。
日本をどうする:―ヒトの脳は感覚を受け、考え、それから運動する。「教育」とはこの三つを訓練することである。しかし、最近では計算や考えることだけを教育と勘違いしているが、もう一度、感覚を育て肉体を鍛え直すこと。人間がエネルギーを必要とする理由は高度な社会秩序を持つ社会(文明)を創りだす為である。方法は生物学的ヒトを社会人に訓練することと、エネルギーを利用して、自然より安定した秩序を手に入れることにより実現できる。意識が秩序活動であるから、意識のある脳にはエントロピーが生じ、ヒトは寝てエントロピーを減少させているが、意識活動である文明は寝ないから文明で生じたエントロピーは自然には減らない。これが環境・公害・温暖化問題の根本である。日本はモノ作り大国で行く。しかし、石油等エネルギーはいずれ枯渇するので将来の文明は人を訓練するしかない。そのために必要なのはやはり「人」であるとのまとめ。
非常に切り口の違った見方(客観的、自然現象的)で現実のシステム、社会現象を分析していることにワクワクさを感じた。でも難しく理解できていない所が多かった。
ぼちぼち結論 (中公新書)

ぼちぼち結論 (中公新書)

生命理論―第1部 生成する生命/第2部 私の意識とは何か

生命理論―第1部 生成する生命/第2部 私の意識とは何か

人生があなたを待っている―『夜と霧』を越えて〈1〉

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人生があなたを待っている―『夜と霧』を越えて〈2〉

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下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち

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オレ様化する子どもたち (中公新書ラクレ)

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